矯正歯科治療では、歯の移動が完了した後に保定(ほてい)という処置が必要となります。それはワイヤー矯正だけでなく、マウスピース矯正も例外ではありません。今回はそんな矯正歯科治療後に使用する保定装置(リテーナー)の特徴や種類、使用上の注意点などをプルチーノ歯科・矯正歯科 四日市院が解説します。保定処置やリテーナーについて疑問がある方はこのコラムを参考にしてみてください。
目次
【1】保定装置とは?
保定装置とは、矯正歯科治療後に患者さんの歯並びを安定させるために使用する器具です。矯正治療によって歯が正しい位置に移動した後、その位置を保つためには保定装置が必要不可欠です。保定装置には、固定式と取り外し式の2種類があります。固定式はワイヤーを歯の裏側に接着して使用するもので、取り外し式は透明なプラスチック製のマウスピースや、プレート状の装置が一般的です。保定装置は通常、矯正治療の終了直後から使用を開始し、数ヶ月から数年にわたって装着することが推奨されます。
【2】保定装置をつける理由は?
矯正治療によって歯が移動した後、その新しい位置を安定させるためには時間がかかります。歯は骨の中に埋まっているため、移動したばかりの歯はまだ不安定な状態です。保定装置を使用することで、歯が再び元の位置に戻ろうとする力を抑えることができます。特に治療直後の数ヶ月間は、歯が元の位置に戻りやすいため、保定装置の使用が重要です。また、歯並びの安定が確保されるまでの期間中に、噛み合わせが適切に調整されることも期待されます。保定装置を適切に使用することで、矯正治療の成果を長期間にわたって維持することが可能になります。
【3】保定装置の種類
保定装置には、以下に挙げる種類があります。
① ベッグタイプリテーナー
ベッグタイプリテーナーは、矯正歯科の保定装置の一種で、細いワイヤーとプラスチックプレートを組み合わせたデザインです。前歯から大臼歯の後方まで取り囲んだタイプで、軽量で口腔内にフィットしやすく、取り外しも簡単です。
② ホーレータイプリテーナー
ホーレータイプのリテーナーは、矯正歯科で一般的に使用される保定装置です。金属ワイヤーとアクリルプレートで構成され、前歯の部分を取り囲んだタイプです。保定効果が高く、多くの患者さんに利用されています。
③ QCMリテーナー
QCMリテーナーは、矯正歯科で使われる新しいタイプの保定装置です。透明なマウスピース状のデザインで、見た目に優れています。患者さんが装着しても目立ちにくく、快適な使用感が得られます。取り外しが簡単で、日常生活に支障をきたさない点が魅力です。
④アスティクスリテーナー
アスティクスリテーナーは、矯正歯科の保定装置として人気があります。高い透明度を持つマウスピース型で、審美性に優れています。強度も高く、長期間の使用に耐える設計です。患者さんの歯並びをしっかりと保定し、快適な使用感を提供します。
⑤クリアリテーナー
クリアリテーナーは、透明なプラスチック製の保定装置で、矯正歯科で広く使用されています。装着時に目立たないため、審美性を重視する患者さんに適しています。取り外しが簡単で、衛生管理がしやすい点も魅力です。噛み合わせを安定させる効果も高いです。
⑥リンガルリテーナー
リンガルリテーナーは、歯の裏側に固定される保定装置です。金属ワイヤーで作られており、見た目に影響を与えないため、審美性を重視する患者さんに人気です。固定式なので、常に安定した保定効果を提供し、矯正治療後の歯並びをしっかりと維持します。
【4】保定装置(リテーナー)のつけ方
保定装置(リテーナー)のつけ方は簡単です。まず、清潔な手でリテーナーを取り出し、矯正歯科医の指示通りに口内に装着します。固定式のリテーナーは歯の裏側に接着されるため、自分での取り外しは不要です。取り外し式の場合、上顎と下顎に合わせてリテーナーをしっかりと装着します。日常生活で食事や歯磨きの際には取り外し、清潔に保つことが重要です。リテーナーの適切な装着方法は、矯正歯科医が詳しく指導してくれます。
【5】どのくらいの期間つけないといけないの?
保定装置(リテーナー)の装着期間は、矯正歯科医の指示に従うことが重要です。一般的には、矯正治療後の最初の数ヶ月から1年間は、24時間装着することが推奨されます。その後は、夜間のみの装着に移行することが多いです。期間は個々の患者さんの歯並びや治療の進行具合により異なります。長期間にわたるリテーナーの使用は、矯正治療の成果を長く維持するために欠かせないものです。定期的な歯科検診で、装着期間の見直しを行うことが重要です。
【6】保定装置をつける際の注意点
保定装置をつける際には、以下の3点に注意しましょう。
◎装着時間を厳守する
保定装置は、指定された時間装着することが重要です。初期の数ヶ月間は24時間の装着が必要な場合も多く、適切な時間の装着により歯並びが安定します。指示どおりに装着しないと、矯正治療の成果が失われる恐れがあります。特に寝る前の装着は欠かせません。矯正歯科医の指示を守り、計画的に装着することが成功の鍵です。
◎破損・紛失したらすぐに作り直す
保定装置が破損・紛失した場合は、直ちに矯正歯科医に連絡し、作り直すことが必要です。破損した装置をそのまま使用すると、歯並びに悪影響を及ぼす可能性があります。また、装置がなくなることで、歯が元の位置に戻るリスクも高まります。保定装置は矯正治療後の歯の安定に欠かせないため、トラブルが発生した際には迅速な対応が求められます。
◎自己判断で中断しない
保定装置の装着を勝手に中断することは避けましょう。装着を中断すると、矯正治療で整えた歯並びが再び乱れる可能性があります。患者さん自身の判断で装着をやめることなく、必ず矯正歯科医の指示に従ってください。特に、装着期間中は定期的に歯科医のチェックを受け、装置の状態や歯の変化を確認することが重要です。計画通りの装着が、長期的な歯並びの安定を支えます。
【7】もしも保定装置をつけなかったら?
矯正治療後に保定装置を装着しない場合、せっかく整えた歯並びが元に戻る可能性が高まります。特に治療直後の歯はまだ安定しておらず、噛み合わせの力や日常生活の習慣によって、再び位置がずれてしまうことがあります。これにより、矯正治療にかかった時間と費用が無駄になるだけでなく、再治療が必要になる場合もあります。患者さんの歯並びを長期間にわたって美しく保つためには、矯正歯科で処方された保定装置をしっかりと装着することが不可欠です。
【8】よくある質問
①保定装置が壊れた、割れた場合はどうしたら良い?
保定装置が壊れたり割れたりした場合は、すぐに矯正歯科医に連絡しましょう。壊れた装置をそのまま使用すると、歯並びに悪影響を与える可能性があります。新しい保定装置を作り直す必要がありますので、早めの対応が大切です。迅速に対応することで、矯正治療の成果を維持することができます。
②固定式の保定装置が外れてしまったらどうしたら良い?
固定式の保定装置が外れてしまった場合も、速やかに矯正歯科医に相談してください。固定装置が外れると、歯が再び動くリスクが高まります。矯正歯科医は、装置を再度固定するか、新しい装置を用意することで、歯並びの安定を確保します。放置せず、早めの対応が重要です。
③保定装置の洗浄はどうしたら良い?
保定装置の洗浄は、毎日の口腔ケアの一環として行いましょう。取り外し式の保定装置は、専用の洗浄剤や歯ブラシを使用して清潔に保ちます。固定式の保定装置は、歯ブラシで丁寧に磨きましょう。定期的に矯正歯科医のチェックを受けることも大切です。清潔な保定装置は、口腔内の健康維持にも寄与します。