大人の矯正治療は、歯並びの乱れをマルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置などを使って細かく整えることが主な目的ですが、ケースによっては外科手術が必要となります。今回はそんな歯列矯正で外科手術が必要になるケースやその内容・特徴、通常の矯正治療との違いなどをプルチーノ歯科・矯正歯科 四日市院が詳しく解説をします。歯列矯正で外科手術が必要と診断された方やその可能性がある方は参考にしてみてください。
目次
【1】歯列矯正での外科手術とは?
歯列矯正で行う外科手術とは、顎の骨を切除したり、その位置やバランスを上下で整えたりする治療です。それなりに大掛かりな手術となるため、一般歯科で行うことは難しいです。基本的には大学病院の口腔外科など、適切な設備とスタッフが整っている医療機関が実施することになります。
【2】外科手術が必要なケース
次の挙げる2つのケースでは、歯列矯正で外科手術が必要となりやすいです。
① 顎の大きなズレ
上下の顎のサイズや位置が大きくズレている場合は、外科手術によってその症状を改善しなければなりません。最もわかりやすいケースは「反対咬合を伴う顎変形症(がくへんけいしょう)」です。下顎骨が長すぎて反対咬合になっている場合は、骨を適切な量、切除した上で後方へと下げます。上顎骨が前方に出ている場合は、それとは逆の処置が必要となります。どちらも外科手術を行わなければ、改善できない症状といえます。
② 通常の歯列矯正治療では治療が困難な場合
「顎の大きなズレ」以外にも通常の歯列矯正治療では改善が困難な症例があります。その際、必要となる外科処置はケースによって変わるため、まずは専門医に相談することをおすすめします。
【3】外科的矯正治療の特徴
外科的な矯正治療には、次に挙げるような特徴があります。
特徴1:骨格にアプローチできる
外科的な矯正治療では、骨格にアプローチすることができます。具体的には、顎の長さや幅、上下のバランスをダイナミックに改善できるのです。そのため骨格的な異常に由来する出っ歯や受け口に悩まされている方には、強く推奨できます。
特徴2:手術の傷が残らない
顎の骨を削る外科手術となると、大きな傷跡が残りそうで不安という方もいらっしゃることでしょう。その点はご安心ください。外科的矯正は主に口腔内から顎の骨を切除するため、外から見える部分に傷跡が残ることはほとんどないのです。もちろん、外科的矯正の種類や患者さんのお口の状態によっては、外からアプローチしなければならないこともありますので、その点はカウンセリングの段階できちんと確認しておきましょう。
特徴3:手術前後に入院が必要となる
外科的矯正は、歯科の中で比較的重たい手術となります。親知らずの抜歯やインプラント手術のように、その日に来院して手術を受け、その後すぐ帰宅できるわけではありません。必ず手術の前後で入院が必要となります。この点は外科的矯正のデメリットに当たる部分ですが、手術で後悔しないためにも事前に正しく理解しておかなければなりません。
【4】通常の矯正治療と外科的矯正治療の違い
続いては、通常の矯正治療と外科的矯正治療の違いについてです。一般的なワイヤー矯正やマウスピース矯正とは何が違うのかも気になるところです。
違い1:後戻りのリスクの有無
通常の矯正治療には、どんなケースにも後戻りのリスクを伴います。なぜならワイヤー矯正やマウスピース矯正は、歯の位置を矯正力によって人為的に動かす治療だからです。私たちの歯の根っこには、歯周靭帯(ししゅうじんたい)という弾力性の高い組織が分布しており、歯の位置をしっかりと固定しています。それは矯正力で歯を動かした後もしばらくは元の位置で固定されていることから、後戻りが生じるのです。
一方、外科的矯正治療は骨を切除して、顎骨の形や上下のバランスを物理的に変化させるため、後戻りすることがありません。その状態は、手術直後はもちろんのこと、手術から数年、あるいは数十年経っても固定されます。ただし、手術後に歯を失ったり、顎の骨が極端に痩せたりした場合は、当初とはまた別の問題が生じるため、その都度、適切な治療を受ける必要が出てきます。
違い2:歯の角度の違い
通常の矯正治療では、今の骨の状態で歯をきれいに並べなければなりません。歯を動かせる距離や角度が限られているため、理想的な歯並び・噛み合わせを実現できない場合もあります。一方、顎骨の形や位置を調整できる外科的矯正治療なら、個々の歯をまっすぐ正常に並べることも難しくなくなります。これは理想的な歯並び・噛み合わせを構築する上で、極めて重要なポイントといえます。
違い3:処置にかかる時間の違い
外科的矯正治療の手術は、数時間で終わります。前後の入院期間を含めても数週間に及ぶことは稀です。もちろん、外科的矯正治療にはダウンタイムがあり、手術後もしばらくは日常生活に支障をきたす場面もありますが、痛い思いや辛い思いをするのは短期間です。通常の矯正治療は、歯を動かすだけでも1~3年程度、保定期間も合わせると2~6年程度かかることから、外科的矯正治療とは処置にかかる時間・期間に大きな違いが見られるといえます。
【5】歯列矯正治療時の手術に保険は適用される?
一般的な矯正治療は「審美的な治療」とみなされるため、保険適用外となります。これは自由診療扱いとなるため、検査料や治療費は医療機関が独自に設定し、費用は全額患者さんが負担します。
したがって、通常の矯正治療における手術も基本的には保険適用外です。しかし、生まれつき口腔内に異常がある先天性疾患で、厚生労働省が定める59疾患に該当する場合は保険適用となります。
例えば、顎変形症や、前歯3本以上の永久歯が萌出しない埋伏歯開窓術を必要とする咬合異常など、特定の条件を満たす場合には保険が適用されるケースもあります。
◎保険適用には「顎変形症」の診断が必要
外科的矯正治療の多くは「顎変形症」と診断されると保険適用になります。顎の骨の大きさや形、位置に著しい異常があり、噛み合わせに問題が生じたり、顔が変形したりする場合、顎変形症と診断されます。
歯列矯正が保険適用となるのは、受け口や出っ歯の原因が顎変形症によるもので、口腔外科または形成外科で診断され、手術が必要と認められた場合に限ります。
◎「顎口腔機能診断施設」を探す必要がある
顎変形症による手術が必要と認められても、歯列矯正に保険を適用するためには、顎口腔機能診断施設に指定された医療機関で治療を受けることが条件です。これらの施設は、国が定めた基準を満たす必要があります。
例えば、特定の検査機器の導入や他の医療機関との連携体制、スタッフの配置など、さまざまな条件をクリアする必要があります。詳細については、地方厚生局のホームページから、自分の地域の顎口腔機能診断施設を検索することができます。
【6】まとめ
今回は、矯正歯科治療で外科手術が必要なケースについて、プルチーノ歯科・矯正歯科 四日市院が解説しました。骨格的な異常に由来する歯列不正・不正咬合は、通常の矯正歯科治療では改善が難しいことから、外科的矯正治療を併用する必要があります。顎変形症と診断されたケースでは、保険が適用されるかもしれませんので、該当する症状がある方はまず歯科医院に相談してみましょう。当院でも大きな医療施設と連携しながら、外科的矯正治療が必要なケースを治すことができます。重症度の高い歯並びにお困りの方は、いつでもご連絡ください。